秋葉原「自炊の森」レビュー 〜業務用スキャナで爆速自炊〜


年末のアキバに颯爽と登場し話題をかっさらっていったスキャンスペース「自炊の森」(公式ページ)が1月21日に本オープン
店舗が所有する裁断済みの本を有料でスキャンさせるというシステムに一時ネットは騒然としましたが、今回の本オープンでは「持ち込みスキャン」がメインということで落ち着いたようです。業務用スキャナを自分でいじれるまたとない機会、ということで早速試しに行きました。

業務用裁断機は意外とお手軽


ベルばらの裏手、GENOの2階にお店があります。看板もしっかり出ていて比較的わかりやすい。

階段を上に上がります。
2Fフロア全体を使っているため面積自体はかなり大きい。
ただ、仮オープンの際に目玉だった裁断済み書籍の棚がかなりを占めているため、スキャン用のスペースは半分程度。
まずは受付で裁断のする本の数を確認してもらいます。
セルフサービスなら1冊50円、お店の人に頼むなら1冊100円です。
今回は7冊の裁断をセルフで頼んだので合計350円。
ホッチキスを使った中綴じの雑誌は裁断機を傷つける恐れがあるため、事前に店員さんが外してくれました。

これが業務用大型裁断機。輪ゴムが置かれているのが親切。
HorizonのPC-45という機種で新品価格はわかりませんでしたが、ヤフオクの中古価格は10万〜15万円程度。
2000冊以上スキャンする人は自分で買ったほうが安上がりです(置き場所があれば、ですが)。

操作はシンプル。

  1. 透明なカバーを開く
  2. 本を裁断する場所に設置。
  3. 手前のハンドルをまわし本の裁断位置を調整
  4. 上のハンドルをまわし本を上からぎゅっと押さえつける
  5. カバーを閉じる
  6. 左右のボタンを同時に押しっぱなしにする
  7. 裁断完了!カバーをあけて取り出す

自分が使っている裁断機PK-513L(参考記事)と比較すると以下のようなメリットがあります。

  • 電動なので全く力がいらない(513Lはよいしょっ程度の力がいる)
  • カバーを閉じないと裁断できないので安全(513Lはちょっと怖い)
  • 本をがっちり固定できるので安定した裁断が可能(513Lは手で押さえていないと安定しにくい)
  • 本の厚さが7cmまで対応可能(513Lは1.5cm)

特に7cmの厚さまで対応しているのは非常に快適。
魍魎の匣4.4cmだろうが境界線上のホライゾン3.2cmだろうが一発裁断です。
最初は店員さんがやり方を教えてくれますが、すぐ覚えられますし慣れれば1冊15秒くらいで裁断できます。
そして裁断した背表紙側の切り口がこちら。

ちょっぴり斜めっちゃってます。やりかた次第ではもう少しうまく切れるのかな?
ちなみに裁断機は1台しかないので混んでいると結構並んでしまうかもしれません。
以下はお店からの注意文。

裁断サービスもご利用の方は、スキャンブースの予約時間前に裁断作業を完了させていただく必要がありますのでご注意下さい。予約した時間までに裁断作業が完了していない場合は予約キャンセルしてフリーでのご利用に変更させていだきます。

ちなみにアイロンを使った解体スペースもあります。

背表紙にアイロンをあてノリを溶かし分解するためのものですね。
ただ、この方法は以前一度だけ試したのですが、結構時間もかかり綺麗に仕上げるのが難しいです。
自炊初心者ならまずは裁断機からやることをオススメします。

業務用スキャナのスピードに感動

さて裁断が完了したらスキャンです。
スキャンするには3種類のコースがあります。

◯レンタルプランA 1500円/15分 (延長15分毎に1500円)
レンタル機材はPC + Canon DR9080C + フラットベッドスキャナ
どんな書籍や雑誌でも安定して電子化出来ます。特殊なページはフラットベットスキャナで万全です。
◯レンタルプランB 1200円/15分 (延長15分毎に1200円)
レンタル機材はPC + Panasonic KV-S5055C + フラットベッドスキャナ
コミックや文庫本の電子化に向いています。特殊なページはフラットベットスキャナで万全です。
◯レンタルプランC 1000円/15分 (延長15分毎に1000円)
レンタル機材はPC + Panasonic KV-S5055C
コミックや文庫本の電子化に向いています。

今回自分が選んだのは「レンタルプランC」。

スキャン用のデスクはこんな感じ。
モノを置くための棚があり、オペレーションしやすくなっています。
スキャナの機種はPanasonic KV-S5055C。実売価格30万円台後半の業務用のスキャナなので以下のようにかなりのハイスペックです。

・解像度:最大600dpi
・用紙サイズ:最大A3まで
・スキャン速度:A4カラーor白黒両面300dpiで120枚/分
・連続スキャン枚数:200枚

これは自炊の定番 PFU ScanSnap S1500と比較すると、速度6倍、用紙サイズ2倍、連続スキャン枚数4倍という圧倒的なパワー。業務用恐るべし。
紙サイズが大きいため、A4より一回り大きい雑誌のスキャンも簡単にできますし、スキャン枚数も実際には300枚程度までいけるため、1冊の本を一発でスキャンできます。。
さてスキャン方法ですが自炊の定番ソフトBTScanを利用します。
手順は以下のとおり

  1. スキャンした本を上部のトレイに設置
  2. 下の排紙トレイのストッパーを調整
  3. BTScanを起動、ファイル名を入力
  4. スキャン設定画面をひらいて、好きな設定を選ぶ。各サイズの漫画や文庫用の設定が予め準備されているのでらくちん。
  5. スタートを押したらスキャン開始。秒間2枚という恐ろしいスピードでスキャンされていく。
  6. スキャンが完了したら自分が持ってきたストレージ(USBメモリーやSDなど)に移動する。iPhoneを使う場合はパソコンから出ているケーブルにiPhoneをさしフリーウェアのiFunBoxで移動させる。

実際使ってみたところ重送はかなり起きにくいようです。
今回あせっていつも行っているスキャン前のパラパラ(紙の間に空気を入れる)をやり忘れたのですが、重送が起きたのは紙が薄い文庫本で1回だけ。
雑誌やコミックスでは重送ゼロでした。このスキャナー、かなりポテンシャルが高い気がします。
最初は操作方法がわからないので、実際のスキャン作業の前に操作方法を覚える時間をもらえます(PDFのマニュアルがありますし、店員さんにも聞けます)。
慣れれば漫画1冊につき2分くらいでスキャンできそうです。
ただ、カバーをスキャンする場合、それだけで+30秒程度かかってしまうのでコストパフォーマンスが一気に悪くなります。
しかしとにかくスピードが違い過ぎるのでこのスキャナーの快適さを一度味わうと、自宅のスキャナーを使うのが苦痛に感じてしまいそうです。

自炊体験としては最適? 個人的には値下げに期待

1分に100ページ、15分1000円で計7冊程度のスキャンができるわけですが、裁断するのに1冊50円なので、結局1冊200円程度かかってしまいます。
カバーや帯もスキャンするとなると、さらに時間を要するので1冊100円〜150円程度の代行スキャンサービス(まとめページ)と比較すると、かなり割高です。
となると、今オススメできるのは以下のような人でしょうか。

  • 自炊をしたことがないので一度体験してみたい
  • 今すぐにデジタル化したい本がある
  • 他人任せではなく自分で確実にデジタル化したい本がある
  • 秋葉原で買い物したものをすぐスキャンしたい
  • A4より大きい本をスキャンしたい

自分の場合、自宅で裁断してカバーだけは自宅でスキャン、それ以外をまとめて自炊の森でスキャンする、というやり方がベストかなあと思いました。
ともあれ、お店の本をスキャンさせるのではなく、持ち込みセルフスキャンというサービスでいくのであれば、なかなか魅力的ですし今後の成長に期待したいところです。



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