明日にも1億人!Facebook最強アプリ「CityVille」の秘密


家庭用ゲーム市場が冷え込む昨今、日本人があまり知らないところでゲームの歴史が塗り替えられようとしています。
2011年1月11日現在、月間アクティブユーザー9879万8539人というバケモノのようなゲームが存在します。
そのゲームの名は「CityVille(シティビル)」。世界最大のSNSFacebook」上で提供されているソーシャルゲームです。
ソーシャルゲーム業界では知らぬ者のいないコンテンツですが、おそらく国内ではほとんど知られていないこのゲーム、自分のように主に家庭用ゲームで育った人間にも今後間接的に関わってくると思われるため、記事にしてみました。
そのため、この記事は「サンシャイン牧場くらいならやったことあるけど、いまいちピンとこない人」向けに「Facebookってなに?」というところから解説しています。

そもそもFacebookってなにさ?

一言でいえば「世界最大のSNSです。SNSであるため、当然サービス内容はmixiと似ているのですが「実名登録必須(偽名、ニックネームだとアカウントを消されることも?)」というところが日本の文化に未だ馴染まず、国内では爆発的ヒットになっていません。
しかし実名による密なコミュニケーションや、いち早くオープン化(誰でもSNS内でアプリが提供できるようにすること)しソーシャルゲームが爆発的にヒットするなどもあり、かつて北米No.1だったMySpaceをあっさり抜き去りました。現在全世界で5億人以上の会員がいます。
今回の記事の主要な点ではないため詳細はググるなどしていただいた方が早いと思いますが、とりあえずmixiの25倍会員がいるバケモノSNSサイトと思っていただければと思います。

CityVilleの前に開発会社「Zynga」の話

CityVilleを語る上でもう一つ外せないのが開発会社であるZynga(ジンガ)」です。Zyngaは2007年1月に設立されました。まさかこの会社が3年も経たずに世界一のプレイヤー数を抱えるゲーム会社になると誰が予想したでしょう。
さてZynga設立後、ブレイクのきっかけとなったのは2007年9月、当時オープン化して間もなかったFacebookに対しポーカーのゲームを提供したことでした。当時Facebookの膨大な会員数をさばける技術を持った会社が少ない中、安定したサービスを提供できたZynGaはたちまち1千万人以上のプレイヤーを獲得します。この「まともにサービス出来れば人が来る」という状態はmixiの「サンシャイン牧場」がヒットしたときと似ています。
さて、その後、泥棒ゲーム、農場ゲームなどどこかの会社が作ったアプリをより良い形でパクり、既存アプリからがっつり誘導することで、安定した会員数増加をとげていったわけですが、その会社が昨年12月に配信開始したものが「CityVille」です。つまり「CityVille」のヒットの下地には

  • これまで提供したアプリの開発、運営ノウハウ
  • 積み上げてきた既存会員をそのまま流し込める環境

という部分が大きかったわけです。

CityVilleの徹底的な「ネズミ講」システム

その名のとおり「シムシティ」などでおなじみの鉄板コンセプト「街育成」を下地にしつつ、いくつかの際立った特徴により劇的にプレイヤー数を伸ばしました。
その特徴の一つが「徹底した友達ヘルプシステム」です。
以下の行為は多かれ少なかれ「CityVilleを一緒にプレイする友達の数」または「友達が自分のお願いに対してリンクをクリックする」ことにより可能となります。

  • 人口を増やす
  • 建物を建てられる範囲を広げる
  • 建設可能なアイテムの種類を増やす
  • アクションするためのゲージ稼ぎ
  • 時折発生するミッションをクリア
  • etc...etc...

「いやそれ全部じゃん」というわけです。このゲーム、何をするにしても一緒にプレイする人がいなければ始まりません。もちろんソーシャルゲームは多かれ少なかれ友達がいないとゲームが進みにくいのですが、CityVilleは友達に協力してもらわなければ、そもそも街を建設すること自体が不可能です。この「友達を引きこまなければ進められない」という凶悪なバランスこそ、爆発的な会員数増加の表面的な原因となっています。

CityVilleの本当のすごさとは?

さて前項で「表面的な原因」と書いたのはもちろん訳があります。「よしじゃあ同じように友達がいないと進められないようにすれば人が来るんだな」と他のアプリに同じような仕組みをいれたらどうなるでしょう。おそらく、そのアプリはよっぽど他の魅力がないかぎり誰も遊ばないでしょう。なぜならプレイヤーは別に「友達を巻き込む」という行為自体に主たる面白みを感じていないからです。
自分がCityVilleのヒットで注目しているのは以下のような点です。

  1. ソーシャルアプリ最高峰とも言えるグラフィック
  2. 徹底的なユーザービリティの作り込み
  3. クリックしたときの気持よさを徹底的に追求


おそらくユーザーが接したとき一番わかりやすいのが一つ目のグラフィックの綺麗さ。まるでPC向けRTSのようです。サンシャイン牧場と無理やり家庭用ゲームに例えて比較するならばスーパマリオブラザースとスーパーマリオワールドくらいの違いがあります。
そして、2つ目はとてもZyngaらしい要素。ユーザビリティの徹底的な作り込みです。プレイしていて次に何をすればいいのか絶対迷わない画面構成。ボタンの位置、大きさ、文字などコレ以外は考えられないであろうレイアウトです。
そして最後、これが実は一番大きいのではと考えているのが「クリックしたときの気持よさ」です。建物は一定時間経つとコインのアイコンが表示されます。この状態でクリックすると経験値とお金が手に入るのですが、その時の挙動の細かさに職人芸を感じます。

  1. 建物をクリック
  2. ゲージが建物上部に表示され、1秒程度で満タンに
  3. お金と経験値のアイコンがポヨンと建物から飛び出す
  4. お金のアイコンをクリックすると星のエフェクトが飛び出す
  5. お金のアイコンが、画面上部に飛んでいく
  6. お金のアイコンは星のエフェクトとともに消え、お金の数値が1単位で増加する

この一連のアニメーションが一瞬で表示され、プレイヤーに快感を与えています。PCだと基本「マウス」で操作する人が多いと思いますが、建物からお金を回収する際、ポインティングしカチカチ連続でクリックするのがかなりの快感になります。PCに最適化された見事な技です。

CityVilleを支える強大な技術力

さてCityVilleの表から見えるスゴさをご説明しましたが、実際に恐ろしいのは簡単そうに見えるこれらのことを実現したZyngaの技術力です。あえてわかりやすく絞るならば以下の2点に集約されるでしょう。

  • ソーシャルアプリでリッチなグラフィックを提供できる技術
  • 全世界2000万人が同時に遊べるサービスを提供できる技術

これらはFlashの技術力とネットワークの技術力が試されます。
まずネイティブアプリに迫るリッチなグラフィックをなめらかにFlash上で動かしていることがまず驚異です。しかもロード時間はそこら辺のソーシャルゲームより早いときています。
そしてリッチなグラフィックにすればFlashの動作が重くなるのはもちろん、サーバーの負荷も膨大になります。しかしこの1ヶ月の間、1日のプレイヤー数が一気に2000万人にまで増加したにもかかわらず24時間安定してサービスを提供してきました。
これができるゲーム会社はおそらく世界でもZyngaだけであり、1億人達成を支えているのも、これまでZyngaが積み上げてきた「技術力」という土台があってこそなのです。3年間という短い期間とはいえ、Zyngaが積み上げてきたノウハウの結晶こそ、世界最高峰のゲーム「CityVille」なのです。